「先覚者のお言葉」は、とくに中小同族経営者のための指標として無限の知恵と勇気が与えられるものであります。
このお言葉に啓発され、立脚点への信念が強固になるに連れて、前途に光明がみえてきます。まさしく「一寸先は闇」ではなくて「一寸先は光」だったのです。この境地にくれば、恐れるものは何もありません。あとは悠々たる心持ちで、勇往邁進するのみです。「お言葉」を若干の解説を付しながら、ご案内していきます。
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《「先覚者のお言葉」》
一身独立して一国独立する事
福沢諭吉先生「学問のすすめ」より
現代語文責 小泉 明
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(独立の気力)
天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず(*1)と言へり。されば天より人を生ずるには、万人は万人皆同じ位にして、生れながら貴賎上下の差別なく、万物の霊たる身と心との働きを以て、天地の間にあるよろづの物を資り、以て衣食住の用を達し、自由自在、互に人の妨をなさずして、各安楽にこの世を渡らしめ給ふの趣意なり。されども今広く此人間世界を見渡すに、かしこき人あり、おろかなる人あり、貧しきもあり、富めるもあり、貴人もあり、下人もありて、其有様、雲と泥との相違あるに似たるは何ぞや。其次第甚だ明かなり。実語教(*2)に、人学ばざれば智なし、智なき者は愚人なりとあり。されば賢人と愚人との別は、学ぶと学ばざるとに由て出来るものなり。・・・
学問をするには分限(*3)を知ること肝要なり。・・・ただ自由自在とのみ唱えて分限を知らざれば、我儘放蕩(*4)に陥ること多し。すなはちその分限とは、天の道理に基づき、人の情に従ひ、他人の妨げをなさずして、わが一身の自由を達することなり。・・・
また自由独立のことは、人の一身にあるのみならず、一国の上にもあることなり。・・・国の恥辱とありては、日本国中の人民一人も残らず命を棄てて国の威光を落とさざるこそ、一国の自由独立と申すべきなり。
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| *1 | 天賦人権思想にもとづいている。 |
| *2 | 中国古典の格言を中心に集めた教訓書で、 江戸時代に寺子屋でひろく用いられた。 |
| *3 | 身のほど、分際。 |
| *4 | 勝手気まま。 |
明治4年慶應義塾を三田の地に移された福沢諭吉先生が、「学問のすすめ」初編を明治5年(1872年)2月に、「学問のすすめ全」と題して世に問われて後に17編で巻を終わったのは、1876年11月でありました。
明治初頭の日本国民の人口は3,300万人でしたが、「学問のすすめ」は、160名のうち1名は必ず読むという、ベストセラーになったと伝えられています。
この「学問のすすめ」を是非とも座右の書として多くの方に読んで頂きたいと思いますが、ここでは特に三編「一身独立して一国独立する事」を引用しています。
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(一身独立して一国独立すること) (国と国とは同等であっても、国中の人民に独立の気概・気風に欠けるときは、独立国家としての権利・義務を伸長することなどはできない。その事の由来は次の三箇条にある。)
第一条 独立の気力なき者は国を思ふこと深切ならず。独立とは自分にて自分の身を支配し他に依りすがる心なきを言ふ。自ら物事の是非を分別して処置を誤ることなき者は、他人の知恵に依らざる独立なり。自ら心身を労して独立の活計を為す者は、他人の財に依らざる独立なり。人々この独立の心なくして唯他人の力に依りすがらんとのみせば、全国の人は皆依りすがる人のみにてこれを引き受けるものはなかる可し。
−後略−
独立に堪えうる精神力のない者は、国(運命共同体)を思う心に深く切なるものがない。ならば、独立に堪えうる精神力とは何か。これは物心両面から見てみよう。
他人の考えに左右されず、自分で物事の正しさと誇りを見分けて、自分の行動にまちがいを起こさない力。
自分の心と体を働かせて、他からの援助を求めない力。
第二条 内に居て独立の地位を得ざる者は外に在て外国人に接するときも亦独立の権義を伸ること能はず。
独立の気力なき者は必ず人に依頼す、人に依頼する者は必ず人を恐る。人を恐るる者は必ず人に諛ふものなり。常に人を恐れ人に諛ふ者は次第にこれに慣れ、其面の皮鉄の如くなりて、恥づ可きも恥じぢず、論ず可きを論せず、人をさへ見れば唯腰を屈するのみ。所謂習、性と為るとは此事にて、慣れたることは容易に改め難きものなり。
−後略−
国内に在りて、独立心を養えなかった者は外国人と応接しても独立心に基づいての行動は出来ない。
独立の気力がない者は、常に他人に寄りかかる。他人に寄りかかる者は、必ず他人の態度を気にかける。そして他人を気にする者は必ず他人におべっかをつかう。こうしていつかそれが習性となり、面の皮が厚くなり、恥知らずの人間になる。いうべきこともいえず、人に会えばただ腰を曲げて下手に出るだけで、この習性はやがて性格のようになる。
第三条 独立の気力なき者は人に依頼して悪事を為すことあり。
右三箇条に云ふ所は皆人民に独立の心なきより生ずる災害なり。今の世に生れ苟も愛国の意あらん者は、官私を問はず先づ自己の独立を謀り、余力あらば他人の独立を助け成す可し。父兄は子弟に独立を教へ、教師は生徒に独立を勧め士農工商共に独立して国を守らざる可らず。概してこれを云へば、人を束縛して独り心配を求めるより、人を放て共に苦楽を興にするに若かざるなり。
現代語 略
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